金目鯛と自転車と [なんでもないようなこと]

遠の昔に少しだけ整備された細い山道を

スタンドのついてない自転車をひいて歩いていたら、

右斜め前の低い木に金目鯛がなっていたので

捕まえようとした。

君はピチピチと跳ねて木から落ちるもんだから

オヨヨ

と、急いで捕まえようとしたんだよ。






が、

地面に落ちたキラキラした真っ赤な金目鯛には湿った土が付いてしまい、

焦った私は素早く金目鯛を拾おうとするんだけど、

いきが良い君はバサバサと騒いで、尚、自らに土をまぶす。




困った私は苦しかろうと

近くにあった大きな水たまりで君を洗おうと

君を優しく捕まえようとするんだけど、

うまくいかず。



・・・やがて君は動かなくなってしまった。



私は君をそこに置いて、自転車をひいて山道を登る。

何事もなかったかのように。

何事もなかったかのように。


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